心に花の咲く方へ【α版】

刺激を受けた感動を言葉で

猪瀬直樹が帰ってきた〜猪瀬直樹×東浩紀『さようならと言ってなかった』刊行イベント

平成26年11月29日
ゲンロンカフェにて。
猪瀬直樹×東浩紀『さようならと言ってなかった』刊行イベント。

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猪瀬直樹は私が尊敬する人物のひとりである。
猪瀬さんとの「出会い」はTwitterである。
なんとなく興味本位で始めたTwitterの中に猪瀬さんはいた。
当時の猪瀬さんは東京都副知事Twitterで発信する副知事として活躍中だった。
それまでの自分の中での猪瀬直樹のイメージは「よく分からない人」。
「よく分からない」とは右なのか左なのか分からないということである。

道路公団での活躍を始めとする公務員改革の旗手•猪瀬直樹像はリベラル。
かたや石原慎太郎の指名で副知事猪瀬直樹

当時は左右のイデオロギーこそが世界の全てと言わんばかりの思考回路だった私には何とも奥歯に物が挟まったような違和感を持つのが猪瀬直樹だったのである。

猪瀬さんはTwitterで次々と都政のアイデアを公開してゆく。
それが私には新鮮でSNSを格段に面白いものにしてくれた。
人物への興味は自ずとその人の作品へと向く。

その昔、東浩紀さんが猪瀬さんの作品を読んで衝撃を受け、影響を受けた。そんな話を今回のイベントでもしていたが、私も例外では無く自分の思考回路を根こそぎ変えられたと言ってもいい。

今思えば、自分が安倍晋三から離れて行ったのはイデオロギーについていけなくなったというよりも、拠って立つ思考の順序が根本から変わったからだと言える。そのきっかけを与えてくれたのが猪瀬直樹なのである。



猪瀬直樹はファクトの人である。
終始一貫それに尽きる。今回の対談でもその猪瀬イズムは一貫していた。
東氏が憂慮する在特会を始めとするネトウヨ安倍政権と言った話題には全く興味が無い猪瀬さん。全く一貫しているなぁと思わず笑ってしまった。

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対談で飛び出した猪瀬さんの大学時代のエピソードはそれを最も象徴していて面白かった。
猪瀬さんは大学時代、左翼学生運動セクトの議長だった。猪瀬さんが未だに左翼呼ばわりされる理由のひとつである。

東さんにそのこと尋ねられた猪瀬さんは「議長といってもやってたことは調整。明日までに立て看板を作らなければならない時に、「沖縄奪還」にするか「沖縄解放」でもめて終わらない。明日までに立て看板を作らなければならないのにだよ?最終的にはなかなか言っても聞かないやつをトイレに連れて行ってぶん殴りましたけどね。で、「沖縄闘争勝利」にした。」と。

場内大爆笑だったが、いかにも猪瀬さんらしいエピソードだと思った。
猪瀬さんは理念よりも実務の人だ。言い回しよりも明日の締め切りが守られなければ何も意味がないと判断できる人なのだ。事実、現実はファクトで動いているのだ。

このエピソードは猪瀬直樹という作家の立ち位置、作風、そして後の道路公団改革、都知事へと脈々と続いているような気がする。そのファクトの前では右も左も全く関係が無いのだ。

右寄りの思想で愛国者でも亡国の徒になり得るということを猪瀬さんは名著『昭和16年の敗戦』で教えてくれている。猪瀬さんは生き様でイデオロギーによる派閥主義が何も意味を持たないのだと教えてくれている。


猪瀬×東対談の興奮は終了直後にTwitterで散々呟いたのでその転載で内容の書留としたい。




ツイートの中にもあるが、ど緊張の中、猪瀬さんに最後の最後に質問出来たことは一生の思い出である。質問と言いながら私は自分の言いたいことを伝えたかった。

都知事を続けて欲しかった。

東さんが奇しくも対談中に同じことを言ってくれたので私もそれに乗っかった。
東電改革の着地を見たかった。
それを猪瀬さんに伝えた時の顔を私は一生忘れない。

猪瀬さんの表情が何を語っていたかは質問の答えからは伺い知れない。
しかし、私には同じ想いを猪瀬さんと共有出来たという確信がある。

私の質問は「if」でしかないので全く意味を成さない。
それは分かっていたが、私はその質問を通して猪瀬さんが夢の続きを思い出してくれればと思ったのだ。それに期待している人間が少なくとも1人はいるのだということを。


最後に猪瀬さんは私の目を見て「辞めちゃってごめんね」と言った。
その表情も一生忘れないだろう。
とても優しい表情をしていた。


猪瀬さんはこうして世間から散々バッシングを受けながらも世間に戻ってきた。
素晴らしい作品を引っさげて。

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おかえりなさい猪瀬さん。